2025年10月29日

シャーとニャーのはざまでーチミママのこと(20)

昨日、ママンの耳の手術から半年の経過観察と検診がありました。いろんなハードルをクリア、おおむね問題なく、ママンはとても元気で若く見えて、本当に13歳なのかな、チミとひとつくらいしか変わらないじゃないかという気もしてきました。12歳とか。奇しくも『シャーとニャーのはざまで』の全国発売と配信スタートのタイミングでの病後報告になったので、あらためてこの春からのことをnoteにまとめて書きました。文章のさわりをこのブログに記します。お時間あるときにnoteをお読みいただけたら。

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シャーとニャーのはざまでーチミママのこと(20)

数枚の写真がある。新しい朝の光を浴びて新緑を背景に佇むママン、その視線はこちらを見つめて少し誇らしげにすら感じる。そして、いきいきとして、とても美しい。そこに写るママンの姿は生命力に溢れている。これらは外猫時代のママンの写真ではない。今日まで黙っていた、春のママン脱走事件のときに僕がスマホで写した写真たち。

2024年の夏は本当に暑くて(今年はさらにそれより暑かったわけだけど)10年に渡る通い猫チミママ(以下ママン)は蚊に刺されて真っ赤に染まった毎年恒例の耳の炎症、鼻や目頭も傷だらけだった。体感40度を越える炎天下で命の危険すら感じてついに彼女を保護することになり、我が家はママンの実の娘であるポチ実(以下チミ)とママン2匹の猫の棲家となった。チミは仔猫のときからの習慣でリードをつけて庭に出て空を仰いでくつろぐことができるけれどママンにはそれが難しく、屋内での生活に慣れてからも窓の外で遊ぶチミを羨ましそうに見つめている姿はやっぱり不憫だった。それでも好きなときに好きなだけご飯を食べ水を飲み、おもちゃで遊び、快適な寝床で眠ることができる暮らしが彼女にとっての幸せだと思いたかった。

今年の春、4月ある日の真夜中、僕の不手際、あるいはチミと共謀したのか、開放されるはずのなかった窓の隙間からママンは家の外へ逃げ出した。ママンを保護してから一番の心配事は間違って再び彼女を外に逃がすことだった。それがついに現実となってしまったのだ。8ヶ月ぶりの屋外、ママンは木を駆け登り、塀を伝って夜の闇に消えていった。その長い尻尾の後姿を目で追うだけで何もできず、僕は絶望してしまった。8ヶ月を家で過ごしてもママンに染み込んだ野性を思うと、もうママンは戻ってこないかもしれない。

眠れないまま朝を迎えるかと思っていた午前三時頃、軒先でカリカリとフードを食べる音がした。ママンは僕の顔を見てシャー、そしてニャーと鳴いた。ママンが庭に帰ってきた。去年の夏からそのままになっていたママンメゾン(ママンが寝床にしていた小屋、現在はチミちゃんアネックスと名前が変わりチミが昼寝に使っている)で丸くなって落ち着いている。窓を挟んだすぐ目の前にママンの姿があることで少し気持ちが落ち着いたけれど、家の中に自分からは入ってくれない。なにしろ8ヶ月ぶりに手に入れた自由だ。僕も不用意に手を伸ばしてまた逃げてしまうのは避けたかった。その日は窓際でママンを眺めながらうとうと眠ってしまった。空が明るくなったときにまだママンはメゾンで香箱を組んでいた。「ママン」と声をかけると、伸びをしてまた木を登り塀を伝って歩き、お隣のお宅の庭の物置の上に軽やかに飛び乗った。追いかけてもう一度「ママン!」と呼びかけた僕を見つめ返すママン。手を伸ばしてカメラを向けてシャッターを押したのがこの写真だ。

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山田稔明 公式note「シャーとニャーのはざまでーチミママのこと」

Posted by monolog at 08:05│Comments(0) │