歌詞を書く仕事の締め切りがあって、しかし歌詞を考えるというのは街を歩いていても車を運転していてもファミレスでお茶してても可能な作業なので「森崎書店の日々」という映画を観にいった。去年神保町の古本まつりをだらだらと一日堪能して、そのカビくさい書店の森の魅力を再確認したところだった。また今年も古本まつりの季節なわけで、いいタイミングでこの映画を観ることができました。
秋になると僕は「アップダイク追記」という歌を歌う。これは「あー、秋の夜にー」とノドをひらくことができてライブ序盤にやるとペースが掴めるという利点もあるが、なにより読書の秋に欲しい本を探し歩きまわる10数年前の自分の姿と再会できるという意味でとても愛しい歌だ。
映画「森崎書店の日々」はとても地味に進行するのだが、この地味さは古本屋や中古レコード屋で誰かに訳あって見捨てられたモノたちに「君たちにわたしが価値を見出してあげよう」と目を細めて指を這わすような思いに通じる“静かな熱”を感じながらの2時間はとても心地良かった。
どんどん捨ててモノは増やさないようにしようと頭は思っても、こういう街やお気に入りの中古盤屋があると無意識の心がそこになにか価値を見出してしまってサルベージしてしまうのだな。
劇中の誰かが「この街は本に似ている」とつぶやくが、それが僕が「オレンジ〜真実」という曲で「真実はいつも切ないもの/..疲れたときにそっと閉じる」と書いたフレーズと貴重低音が同じような気がしてハッとした。
神保町古書街、今年は台風のせいで古本まつりは大変だろうが、初めてそこを訪れると東京にこんな街があったのかと思うような風景に出会えるので未体験の人には強くお薦めしたい。