
8月最後の日は日曜日、関東は今年一番の暑さ。お昼に東京を出発して鎌倉へ。とにかく暑い。せっかくだから海辺まで、と思うがむせるような熱気についに車から降りることができず、この材木座海岸の、いかにも夏満喫!みたいな色鮮やかな写真は車窓から手を伸ばしてスマホで撮ったもの。この日ライブに来られたお客さんたちのなかには頑張って砂浜まで降り立った人が何人もいたようで、みんなすごい頑張ったね。それだけでも夏の思い出ひとつ作れたのではないでしょうか。
鎌倉モルンでのライブはもう何度目だろうか。去年に続いて名物イベント「貸切り図書館」に誘ってもらった。夏を終わらせるつもりでセットリストを組んだけどまだまだ残暑は続きそう。会場準備とリハーサルの後、足元のルーパーにヒグラシの鳴く声が入ってるのに気づいて、それを開場時に薄くながしていたのだけど、ふと気づいたら控室の窓の外から本物のヒグラシの声が聞こえてきて、やっぱり季節は少しずつだけど進んでいるんだなと思いました。

まだ日差しの残る明るい時間から始まったライブ。「暑くもなく寒くもなく/夏休みの最後の日曜日に」と歌う「遅れてきた青春」でスタート。「何もない人」もこの夏歌いおさめかな。「虹とスニーカー」「桃色の雲」は裏ベストとも言える『SONG LIMBO』からセレクト。「high tide」は波音のループに乗せてギタレレで。去りゆく夏を見送るコーナーでした。
本を紹介するコーナー、今回は2パートに分けて。最近読んだ藤原新也「メメントヴィータ」は40年前に刊行された名著「メメントモリ」と呼応するタイトル。コロナ禍に藤原氏が担当したポッドキャストを起こしたエッセイ的な読み物で、ページを開くたびに気づきがあった。僕が大学進学の進路を決意したのは彼の著書「アメリカ」を読んだからだ。あれから35年経って新刊を読んでいることが感慨深い。その流れで「一角獣と新しいホライズン」を歌いました。


今年観た映画のなかで『桐島です』は長い余韻を残すものだった。その脚本を手がけた梶原阿貴の自伝的エッセイ「爆弾犯の娘」、僕と同い年、そして一人っ子という彼女の出自もあり夢中で読み終えた。両親と子どもの関係性、愛と憎しみ、哀しみとおかしみ。ジェーン・スーも僕と同い年で一人っ子。彼女の最新著「介護未満の父に起きたこと」も同じ感覚であっという間に読み通した。一人っ子界(というものがあるのなら)のレジェンドはみうらじゅん氏であり、みうらさん自身が還暦を超えて老いていく姿を面白く見せてくれているのが「アウト老のすすめ」である。どうしても深刻になってしまう親の介護の問題、加齢問題を軽やかに駆け抜けていけたら。「走馬灯」を久しぶりに歌いました。
五十嵐くんに登場してもらって2人でのセッション。ギターとベースと歌のアンサンブルがとても新鮮。「glenville」「hanalee」と10年以上演奏している曲でも新しい響きがありました。「シャーとニャーのはざまで」を楽しく演奏したあと、新曲「最後のお願い」のときの空気感がこの日の個人的ハイライト、続く「光の葡萄」がクライマックスでした。僕が「Sing it!(歌って!)」というと客席から大きな声でシンガロング、歌声が聞こえてくる幸せ。こんなこと去年まで想像もしなかった風景。


アンコール、湘南といえばサザン、「夕陽に別れを告げて」をカバー。『KAMAKURA』というアルバムに収録されている、思春期の頃からずっと好きな歌。「八月のベルカント」もこの夏の歌い納め。もう一度五十嵐くんに登場してもらってギターを手伝ってもらって、明日から九月ということで「harvest moon」で衣替え。最後はみんなで「my favorite things」、夏の最後の思い出になりました。たくさんのご来場ありがとうございました。初めてライブに来たという方も少なくなく、大好きなモルンでみんなと時間と空間を共有できたことがとても嬉しいです。
綾ちゃん、五十嵐くん、モルンの15周年おめでとう。また来年、鎌倉でみんなで集まれたらいいなと思います。

photo by シカゴキカク