毎度名物の客席からの怒号のようなリクエストが今回は控えめだった気がしたのはコロナ禍以降のせいか。思わぬレアな曲もいくつか聴けたけれど、しっかりジャクソンが考えたセットリストで歌が聴けたのもよかった。2月にキーボード奏者のジェフ・ヤング、3月にデヴィッド・リンドレーと音楽を共に作ってきた盟友の旅立ちが続いたので追悼ムードも色濃かった。「Call It A Loan」は意外ににも唯一のジャクソンとリンドレーの共作曲だそうで、とても丁寧にギターのフレーズが演奏されたことが印象的だった。ジャクソンは今74歳、眉毛もひげも白髪になったけれど、すらりとした容姿と声は力強い。なんの不満もないコンサートだった。
本編最後は「孤独なランナー」で締めくくられたのだけれど、これは僕が初めて出会ったジャクソンの曲。アンコールでピアノにピンスポットライトが当たって始まったのが「The Load-Out」。これをずっと生で聴きたかったのだ。3度目のライブにして初めて体感することができて涙が溢れてきてびっくりした。ライブを見て泣くのはいつ以来だろう。そしてレコード通りに「Stay」が始まった。この繋がりが聴きたかったの、ずっと。最近買ったオペラグラスは明るくはっきり見えてとても良い。覗き込んだグラスのなかのジャクソン。これまでで一番悪い席だったけど、胸に迫るこれまでで一番素晴らしいコンサートでした。

追記:ジャクソン・ブラウンがロックの殿堂入りしたときに彼を讃えるスピーチをしたのはブルース・スプリングスティーン。そのブルースの全アルバムをレビューする音楽メディアサイトTURNの素晴らしい企画に参加して寄稿しました。こちらもぜひお読みください。
疾走する男の気骨たる記録ブルース・スプリングスティーンアルバム・ディスク・ガイド