世界の終わりかも、と思った。揺れがおさまり外に出てもあたり一帯が真っ暗だ。充電式のランタンの灯りを掲げて照らすと、すぐ向かいの家の前にひとり人が立っていて、「大丈夫ですか?」と声をかけると、その人はスペインから来たという青年だった。「こんなの初めて」と呆然としている。「大丈夫大丈夫」と僕は根拠のない大丈夫を繰り返し、一区画歩いて近藤研二さんちまで行ってみた。「停電してたら呼び鈴もならないかな」とかどうでもいいことを考えながら。するとちょうど近藤さんも玄関の前で懐中電灯で周りを照らしていたところで、こういうときに近所に友だちがいるのって本当に心強いなと思った。少し歩くと通りの向こうは街灯がついているので停電のエリアはこのへんだと我々の区画くらいみたい。
家に戻るとチミがスンスンと鼻をならしてリビングをパトロールしていた。うちには電池式の超アナログのラジオがあったのでかろうじて状況を把握することができた。東京では2万戸以上が停電していること。震源は福島の海、ひどいところでは震度6強、暗闇のなかで時間が流れるのが遅い。原発で火災とかラジオから不確定な情報も聞こえてくる。今週末のライブはまた延期かな…とか東北の知り合いたちは大丈夫だろうか、とかいろんなことを考えて毛布にくるまっていたら「パッ!」と全部の電気が一気に復活した。1時20分頃、1時間半以上経て停電は回復。それからしばらくNHKの臨時ニュースを眺めて、着の身着のままでいつの間にか寝てしまっていた。
翌日友だちとやりとりすると僕が世界の終わりだと思った地震が、一方では「寝てて気づかなかった」という人がいたり、同じように停電して寒さを凌いでいた人がいたり、うちは物が倒れたりお皿が割れたりすることはなかったけど、大事な楽器やコンピューターに被害があった知り合いもいた。今回停電して真っ暗になった後に揺らされたことが僕にとってかなりのダメージだった。不安と緊張。去年の3月に用意した防災バッグのなかを慌てて探って役にたったものは頭につけるLEDライトくらいで、それも川口浩探検隊みたいな自分の姿を鏡で見て面白くて気が紛れる、というレベルの気休めだったから、あらためて地震の備えを考え直さないといけない。ディザスタームービーと本当の地震は全然違うリアリティを伴う。
被害にあった方に心からお悔やみを。みんなで指摘しあって災害に対する備えを。
