10月に入って、タバコがいつもよりも派手に値上げされた。僕が初めてタバコを吸った頃は200円ちょっと、タバコをやめた2004年に270円だったマイルドセブンスーパーライトは今月410円になったらしいから1日2箱とか吸ってたらそれは大変だ(僕がそうでした)。僕がタバコをやめた理由を知らないファンの人もいるかも知れないので書くと、2004年4月に肺気胸という、肺に穴があく病気で緊急入院してライブ数本をキャンセルし、その後半年休養というタイミングで僕は10数年吸っていたタバコを完全にやめたのでした(このブログを始めたのもそのとき)。
退院する日に主治医の先生に「あ、そうだ。山田さん、胸腔鏡手術のときに撮った肺の写真見せてませんでしたね。このピンク色のが肺で、その上のドス黒い無数の横縞がタバコのヤニですから」とそっけなく示されたどぎつい写真と対面して僕はもうタバコを吸いたくない、と思ったのだ。
それでも僕が書いた歌のなかには「僕はこのタバコの一本が終わるまでに君のところへ」とか「妙に艶やかな染みをつけて/僕はタバコを吸った」とか「僕のポッケのタバコは全滅さ」とか、タバコを小道具にした心理描写がとても多く、それをステージで歌うときにはタバコを吸っていた自分に戻っている、ような気がする。
タバコを手遊びする仕草はとてもささやかに心理を映し出すので、タバコを吸わなくなってから表現手法がひとつ減ったような気がしていた。失うのと同時に真夜中にタバコが切れた時の面倒くささや朝起きた時の気持ち悪さなどから解放されたのだから天秤は均等に揺れている。
このブログを読んでいる男女がどれくらいタバコを吸っているのか、どれくらいの人が吸っていないのか見当もつかないが、僕は喫煙経験者であり非喫煙者という立場から今回の値上げについてはなかなか適切な言葉を持ちません。ただひとつ言えるのは何度もトライすることなく、あっけなく禁煙できたことは不幸中の大きな幸いだったなあ、ということだ。
自分ではタバコを吸っていたときの自分の声と今の声は全然違って聴こえる。タバコをやめた当時はお酒もコーヒーもつまんなくなるのかなあなんて思っていたけど全然そうじゃなかった。同じ喉を震わせて、同じ喉で飲み込んでいるのに不思議。そんなことを思う10月、童心にかえった吉祥寺のおもちゃ市場と、駐車場の猫。


